リーマン・ブラザーズ(4)

Foovoowoo Japan EnglishFoovoowoo Japan 中文Foovoowoo Japan 日本語Foovoowoo Japan FrancaiseFoovoowoo Japan Espanola
やがてそんな行動にやや疲れたのか、「ロシア人」が、アトランティスのバーテンが教えてくれた「外国人が集まるバー」とやらに、取り合えず行ってみようと言い出した。
木屋町通りから程近い裏通りを入った地下の店で、かなり広めで解放感のあるスタンディング・バーだった。

が、その時点では私達以外に客がほとんどおらず、少々拍子抜けしてしまった。
「ロシア人」はカウンターに向かうと、ビールを三人分持って来てくれた。改めて乾杯して雑談しているうちに、周りに人もおらず話し易かったのか、二人ともアトランティスで飲んでいる時とはうって変わって打ち解けたような感じで大声で話し始め、やがて下ネタが炸裂し始めた。

「日本人の女性は最高だよ!世界一だね。なんと言っても、XXの締まりがバツグンだ!」

とか

「オレは日本の女子高生の制服が大好きなんだ。制服姿の子が相手してくれる店はないのか?」

などと、しょーもない事を真顔で話し続けるのだった。
只、そんな下世話な話をするのは決まって「ロシア人」の方であり、一方の「マット」は静かに聞いているというか、距離を置いているというか、良い意味で冷静で品のある感じの振舞いが、彼とは対照的だった。

そのうち、他の客もちらほら入って来た中で、ある西洋人のカップルが私達の近くに陣取った。すると「ロシア人」がすかさず彼らに声を掛けて話をし始めた。聞けばオーストラリアからの観光客との事で京都は初めてとの事。その後、そのカップルも含めて5人で同じテーブルで飲み出しているうちに、やがて「ロシア人」がカウンターから人数分のドリンクを持って来た。
ショットグラスに入ったソレは、人によって「ボンバー」、または「ショット・ガン」などと呼ぶ、テキーラベースのキョーレツな飲み物だった。グラスの口を押さえたまま、その底をテーブルに叩き付け、炭酸の泡が溢れそうになったところを一気に飲み干すアレだ。

私自身、学生時代には六本木のバーで何度か飲んだ事もあって、妙に懐かしくも思った。それぞれの目の前に置かれたグラスを叩き付けると、五人一斉に飲み干した。
オーストラリア人カップルの乗りの良さに気を良くしたのか、その後も「ロシア人」は次から次へとボンバーを人数分持って来ては、一気飲みを皆に煽った。

気が付けば、裕に1人7杯は飲み干したのではないだろうか。私も酒は強いつもりではあったが、連中がこれほど飲むとは正直思っていなかった。みな目に見えてテンションが上がり、私自身、この辺りから記憶がおぼろげになりつつあるのを感じ始めていた。

夜も遅くなり、例のカップルが手を振りながら帰って行くと、再び三人で次に行く店の案を練り直した。
この頃になるとみな相当酔いが回っていた事もあり、連中の要望も基準値も低くなったのか、女の子が一緒にいる店ならどこでもいいといった感じになっていた。

再び木屋町通りに戻りソレっぽい客引きに声を掛け、スンナリとその店に入る事にした。その時点で相当に泥酔していたのだろう、その店がキャバクラだったのかなんだったのかは後になっても全く思い出せず、ただ傍らに女性がいた店を3軒ほどハシゴしたという記憶だけが残るのみである。そして次に気付いた時には、最後の店を出たところで、その目の前には高瀬川が静かに流れていた。

薄暗いビルのロビーから急に目の前の視界が開けて気分が高まったのか、私は自分より遥か上にある外国人二人の肩にかけていた両手を下ろすと、前方に向かって走り出り出した。
、、、のだと思う。

次の瞬間、気が付くと私は高瀬川のど真ん中に突っ立っていた。足元には水深20~30㎝程の水が絶え間なく流れていた。

<あ、入っちゃった。。。>

時間差で水の冷たさが足に伝わり、さすがに酔いが醒めた。路上では連中もさすがに呆れた表情で笑っている。水に浸かってグチョグチョと感触の悪い皮靴のまま、それでも私はめげずに彼らと次の店に向かう事にした。

さて連中の今度のリクエストは「鴨川が一望できるバー」というものだった。
女の子のいる店はもう充分という事で、口直し的な店といいう事だろうか。鴨川が見えるとなると立地的には先斗町だろうと、またもやアトランティスの付近まで戻って聞き込み調査が始まった。

「ビューティフル・リバー・ビュー。」

何件に聞き回っただろうか。やっとそれらしい店を見付けて入ってみると、予想外にインテリア・センスの良いレストラン・バーで、賀茂川に面してかなり間口の広いテラスが設けられていて、確かに鴨川が一望できる。
手摺も床も重厚感のある石貼りのテラスは彼らの想像以上だったようで、二人ともエラく気に入ったようだった。店内で軽く食事をした後、テラスに出ると、欄干の上に置いた各々のシャンパングラスを鴨川に向かって突き出す様に合わせて、改めて三人で乾杯をした。

シャンパンの気泡に店内の灯りが微かに反射して、グラスの中にまるで星が散りばめられているかのように見えた。

<自分は今、一体どこにいるんだろう?>

京都にいるというより、どこか他のアジアの国にいるような不思議な気分になった。

<そうだ。オリエンタルか。>

タイのバンコク市内を流れるチャオプラヤー川の畔のオープンテラスのカフェ。老舗オリエンタルホテルの一角にあるその店には10年以上も前に訪れた事があったが、その佇まいのイメージが目の前の景色となんとなく重なり、妙に懐かしくも思えた。

やがて例の二人はテラスに佇んでいた他の女性客に、ボトルで頼んだシャンパンを振舞い始め、いつしか知らない者同士が歓談しながら、さながら結婚式の二次会パーティーのような様相を帯びて来た。そんな中、私はといえば、酔いで目が回り、体はフワフワしてほぼ夢見心地になっていたのだった。

と、そんな余韻に浸っていたのも束の間、程なくして私の記憶の中の状景は様変わりし、気が付くと、先程とは打って変わる喧騒の中、大音量の音楽がガンガンに鳴り響くフロアーで、狂ったように踊っている自分がいた。どこぞのクラブに来ているようだが、どうやってここに来たのかすら覚えていない。周りを見回すと、「ロシア人」と「マット」がソファー席に座って寛いでいるのが見えた。

<ん、なんでオレだけ踊ってんだ?>

席まで行って彼らに話しかけてみたが、さすがに疲れた感じで、笑顔にも少々力が無くなっているように見えた。

<ここは連中の為に話し相手でも探してくるか。>

私は再びフロアーに戻り、またもや狂ったように踊りまくった。
やがてかなり激しい踊りをする、女子大生と思しき女の子が目に付いたので、思い切って声を掛けてみた。
ナンパなんて十数年振りだ。こんなオッサンでは相手にされないかと内心ビクビクしていたが、意外にノリが良い子で話が続いたのをいい事に、仲間がいるので一緒に飲まないかと誘ってみた。
彼女を二人のいるソファー席に連れて行き連中の間に座らせると、彼らも少し疲れが吹き飛んだのか、身振り手振りも交えて、皆で楽しそうに話し始めたのだった。女の子の方は連中に任せて、こちらとしては久しぶりのクラブで勢い付いてしまった事もあり、私はここぞとばかりに脇目も振らず延々と踊り続けた。

ような気がする、たぶん。。。

(次のページに続く)


印傳屋(INDEN-YA)の粋な印伝小物たち ~現代に映える伝統工芸・甲州印伝の世界~

鹿革」×「色漆」×「伝統

印傳屋(INDEN-YA) の"粋"な印伝小物たち

マッサージ
交差点
コンセント
福笑い
「なっ、ない!」
「なっ、ない!」 PARTⅡ
半年前の記憶

あなたの姿勢に合わせてぴったりフィット!
変幻自在の新感覚ソファ 「Yogibo (ヨギボー)」

Copyright (c) 2010 Foovoowoo Japan