Surprising Stories "Memory a Half Year Ago"

あれは忘れもしない2003年の年始。三が日も過ぎ、翌日から会社も始まろうという矢先の日曜日、1月5日の午後の事だった。

2階の自室でまどろんでいると、ドアのノック音に続き、神妙な面持ちで母が部屋に入って来た。

「清彦、警察の方が来てるんだけど。。。話を聞きたいらしいから、降りてきて。」

「警察???」

寝耳に水とはこの事だ。なんだって正月早々、警察が?
しばし、頭の中の検索エンジンをフル回転させ、過去に遡り自分と警察との接点を瞬時に思い出そうとした。

<あの件か、、、それともあれか?>

強引に記憶を呼び起こせば、いくつかの出来事が候補に挙がらなくもなかったが、どれも警察に捕まる程の大事ではないはず。そう思いながらも不安が解消しないまま、一階への階段をゆっくりと恐る恐る降りて行った。

玄関に立って待っていたのは50歳代と思しき男性二人で、私服のところを見ると、いわゆる刑事というやつなのだろう。私を見上げると、そのうちの一人が開口一番にこう言った。

「え~と、清彦さん? シトロエンに乗ってますよね?」

「は、はい。」

「実はですねぇ、、、」

<な、なんだ?車絡みかよ。だとするとあの件くらいしか思い当たらないぞ。そんなんでわざわざやって来たのか?>

あの件というのは、その数年前の出来事。
鷺沼の友人宅に行った帰り、土地勘が無かった事もあり、誤って一方通行の道を逆走してしまい、慌ててバックで戻った際に、曲がり角にあった民家の植栽に突っ込み、車のバンパーが曲がってしまった事があった。 只、こちらの車には損傷があったものの、ぶつけた先に目に見えて破損した様子はなかったはずなのだが。。。

車といえば他にも、交差点でエンストし人に押してもらったとか、高速でエンジンが焼き付きジャフに牽引してもらったとか、駐車場の入り口でボンネットから煙が上がった、とかいった笑って済まされる類の珍事はあっても、警察のお世話になるような事はした覚えが無い。

刑事は続けた。

「半年ほど前に伊豆で起きた事件のことで捜査をしてましてね。関係ないとは思いますが、一応、お話をお聞きかせ願えればと思いまして。」

<伊豆での事件 と オレの車 との関係?>

確かに伊豆が好きな私は当時、年に4・5回以上は車で旅行に出掛けていたが、事件に関わるような出来事は全く思い当たらなかった。

「伊豆ですかぁ、、、どんな事件なんでしょう?」

「殺人事件です。Chinese womanの。」

「え、えぇぇっ?!」

これは話が長くなると思ったのか、私の傍らに立っていた母が二人を家の中に招き入れた。

「ここじゃなんですから、どうぞ、上がってください。」

父はたまたま不在で、私と母と刑事二人、正月早々、仏壇のある自宅の居間で取調べになるとは予想外の展開だ。話を聞けば、刑事二人のうち一人は警視庁の捜査員、もう一人はShizuoka Prefectural Policeの捜査員で、合同捜査をしているらしい。

「最初に言っておきますが、捜査網を静岡から東京方面へと拡げて、既に6万台以上の車を調べてまして、その中の一台として一応、お話を伺うといった程度ですんで、あまり心配されなくて結構ですから。」

<おいおい、その程度だっていうなら何も正月早々に来なくてもいいだろうに。。。>

話を聞くと、その事件とは、半年ほど前の5月29日の夕方、伊豆半島の南端、石廊崎のとあるガソリンスタンドの跡地付近で、Chinese womanの死体が発見されたというものだった。
事件発生からしばらく経った後も有力な手掛かりが得られず、当初は事件日前後に伊豆半島内に出入りした車を調べていたのを、更に東名高速を通過した車にまで、捜査対象の範囲を拡げたのだそうだ。

概要を説明した後、予想していた言葉を刑事が口にした。

「かなり前の事ではありますけど、5月の後半に伊豆の方に行かれてますよね?その時の事をできるだけ詳しくお聞かせてくれますか?」

「え~と、半年前ですよねぇ。すぐに思い出せるかなぁ。。。
あ、そうだ。たぶん当時の記録があると思うんで、ちょっと待って下さい。」

そう言って、私は2階に駆け上がった。前年の5月に伊豆と言われれば、一泊くらいの旅行をしたような記憶があるし、当時付けていたエクセルの家計簿を見れば、支出記録から細かい行動が思い出せるかも知れないと思ったのだ。

(次のページに続く)

       
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